給付という名の細い糸

要旨

ある町では、広場の噴水が新しくなった。人々は水をくみに来て、時々小さな袋を受け取る。袋の中身は助けの印だと言われた。だが噴水の仕組みをよく見る者は少ない。水は遠くから集められ、ぐるりと巡って、少しだけ戻される。袋を受け取る人々の背後で、町の水路は静かに形を変えていく。気づかぬうちに、水の流れは誰のものでもない顔をして、しかし確実に一つの場所へ集まり始める。

キーワード
給付付き税額控除、消費税、再分配、徴税構造、国家権力

広場の新しい噴水

町の広場に、新しい噴水ができた。

以前のものより立派で、石の縁も磨かれている。役場の掲示板には説明が貼られていた。水をくみに来る人の中で、暮らしの苦しい家には小さな袋を渡す仕組みだという。袋には硬貨がいくらか入っている。

町の人々は安心した。水はみんなのものだが、重い桶を抱える家ほど大変だ。だから袋を渡すのは良いことだ、と誰もが言った。

広場の空気は穏やかだった。役場の人は、これで町はもっと公平になると言った。水を多く運ぶ家は少し多く水を流し、苦しい家には袋を渡す。そうすれば誰も困らない。

仕組みは立派に見えた。

噴水の水は、遠くの川から引かれている。水路は地面の下を通り、町の家々を巡って、最後に広場へ集まる。そして袋は、その広場で配られる。

誰も不思議に思わなかった。水は広く集められ、必要なところに返される。それだけの話に見えたからだ。

袋の仕組み

ただ、水路の地図を眺める人はほとんどいない。

袋を渡すには、誰がどれだけ水を運んだかを知らなければならない。どの家の井戸が浅く、どの家の桶が重いかも調べる必要がある。

そのため役場は、町中の家の様子を帳面に書き始めた。家族の人数、井戸の深さ、畑の広さ、収穫の量。袋を渡す相手を間違えないためだという。

それ自体は親切な作業に見えた。

だが帳面は年々厚くなり、棚が増え、倉庫が広がっていく。町の様子は細かく記録され、役場の机の上にはいつでも広げられるようになった。

水路も少しずつ変わった。昔はそれぞれの家の近くで分かれていた流れが、今は一度大きな管に集まる。そこから広場へ向かい、袋とともに再び町へ戻る。

この形はとても整っていた。

集める水 - 戻る水 = 見えない流れ

人々は袋を手に取り、ほっと息をつく。

そして水路の形が変わったことには、ほとんど気づかない。

見えない流れ

町には三つの家がある。

  • 袋を受け取る家。
  • 袋を受け取らないが、何とか暮らしている家。
  • 袋を気にしないほど余裕のある家。

広場で袋が配られると、最初の家は喜ぶ。最後の家は特に困らない。そして真ん中の家は、少し多く水を流すことになる。

けれど広場では、袋の話だけが語られる。水がどこから集められ、どれだけ増えたのかは、あまり話題にならない。

水は毎日の料理や洗濯の中に溶け込む。少し増えても、はっきりとは分からない。

袋だけははっきり見える。

町の人々は袋の重さを覚えているが、流れの増え方までは数えない。

役場は静かに水路を整えていく。大きな管を太くし、集まる場所を広げる。

袋がある限り、広場は静かだからだ。

水路の終点

やがて町の地図は、ずいぶん簡単になった。

どの水も一度、同じ管を通る。そこから袋とともに町へ戻る。

昔は、井戸ごとに水の流れが違った。今は違う。すべての流れが、まず一つの場所へ向かう。

広場の噴水は今日も静かに水を吹き上げている。袋を受け取る人は、ありがたそうにそれを握る。

遠くの川から来た水が、町を巡り、再び広場に集まる。その途中で、ほんの少し形を変えるだけだ。

集めるほど流れは太くなる

ある老人が、ふとつぶやいた。

この噴水は、水を分けるためのものではない。水を一度、全部集めるためのものだ。

噴水は今日も、変わらずきれいだった。だから誰も、特に気にしなかった。

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