給与明細の小さな疑問
毎月の給与明細に、児童手当のための項目はない。だが、その金は確かにどこかに流れていく。子どもを持たない男が、自分のお金が他人の子どもに使われていることに気づくまで、そう時間はかからなかった。
- キーワード
- 給与明細、税金、子育て、疑問、選択
引き落とされる金
男の手元に、給与明細が届いた。総支給額から、所得税、住民税、社会保険料が差し引かれ、手取りが記載されていた。その中に、児童手当や子育て支援のための明確な項目はなかった。
だが、男は知っていた。自分の支払う税金の一部は、子どもを持つ家庭へと流れていく。保育所の整備、児童手当、教育費の補助。それらの支出は、どこかの誰かの子どもに使われている。
男は子どもを持たなかった。それでも、自分のお金が他人の子どもに使われている。その事実に、男は小さな違和を感じた。
誰かのための支払い
男の周りでは、子どもを持つことが当然のように語られていた。子どもは社会の未来だ、と。子どもを育てることは、皆のためになる、と。
男も、その考えが間違っているとは思わなかった。だが、自分のお金が他人の子どもに使われることに、納得がいかなかった。なぜ自分が、自分の選ばなかった道のために金を払わなければならないのか。
男の疑問は、単純なものだった。子どもを持つ者は、その責任を負う。一方、子どもを持たない者は、その責任を負わない。だが、税金は平等に課せられる。これは、公平なことだろうか。
男は、その疑問を口に出すことはなかった。周りの誰もが、それを当然のこととして受け入れていたからだ。男も、その流れに逆らうことはできなかった。
続ける支払い
月が変わり、また給与明細が届いた。男の手取りは、前月とほとんど変わらなかった。だが、男の疑問は、少しずつ大きくなっていった。
男の支払う税金は、子どもを持つ家庭へと流れ続ける。男の選択は、その流れを変えることはなかった。男の疑問も、その流れを止めることはなかった。
男の生活は、特に変わることなく続いた。給与明細が届き、税金が引き落とされ、手取りが記載される。その繰り返しが、男の日常だった。
男の疑問は、答えを求めることなく、男の心の中に残った。
給与明細は、次の月も届く。
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