若者と空の貯金箱

要旨

非課税の枠が広がると、若者は貯金箱を持たされる。説明は簡潔だ。早く入れて長く寝かせれば増えると。だが貯金箱は軽く、底は薄い。誰かが蓋を開ければ、中身は消える。制度の言葉は優しい。だが実際には、見えない重さが若者の肩にのる仕組みができあがっている。

キーワード
非課税、若者、貯金箱、負担

小さな箱の話

ある町に、誰でも手に入る小さな箱が配られた。箱には「税はかからない」と書かれていた。町の人々は箱を喜んで受け取り、毎月少しずつ物を入れた。箱を持つことは誉められ、箱を持たないことは後ろめたくなった。箱の説明は単純だ。長く置けば増える、と。だが箱の底は薄く、箱の説明は増える部分だけを強調していた。箱を配った側は、箱が増えると町全体が豊かになると語った。箱を売る店は、箱を満たすための道具を並べた。箱を持つ若者は、夜に箱の中身を数え、安心したり不安になったりした。箱の存在は日常になり、箱を持つことが「正しいこと」になった。

箱の前提をひとつずつ外す

箱の説明には前提がある。まず、入れる物が余ること。次に、箱を開ける必要がないこと。さらに、箱を満たすために他を削らなくてよいこと。だが町の現実は違った。若者の手元に残る物は少なく、箱を満たすために食費や急な出費を削る者が出た。箱を満たす行為は、いつしか「枠を埋める」こと自体が目的になった。店の宣伝は成功例だけを見せ、失敗の話は小さく扱われた。箱の底が薄いことは、誰もが気づいていたが、箱を配った側の説明は変わらなかった。箱を持つ者は、失ったときに自分の判断が悪かったと告げられるだけだった。説明は美しく、前提は隠され、結果の重さは個々の肩に残った。

制度の見かけの利得 = 非課税の魅力 × 枠の大きさ

箱をめぐる力の流れ

箱を配った側と箱を売る店は、箱が増えるほど得をする。箱が増えれば市場は活気づき、店は道具を売る。箱を持つ者は、増えたときの恩恵を受けるが、減ったときの痛みは自分で受ける。情報は偏り、成功の話が目立つ。若者は短い物語を繰り返し聞き、同じ行動を取る。箱の中身が減ると、説明は「自己責任」として片付けられる。制度の言葉は、全体の負い目を個々に振り分ける装置として働く。見かけの利得は公的な負担の軽さに変わり、実際の重さは若者の生活に残る。箱の周りで笑う者と、夜に数を数える者の差は、制度の設計が作った差である。

最後に箱を閉める音

ある夜、箱の底が破れた。破れた音は小さく、最初は誰も気づかなかった。翌朝、箱を持つ者たちは中身が減っていることに気づき、慌てて蓋を開けたり閉めたりした。店は新しい道具を勧め、箱を配った側は説明を繰り返した。だが箱の底は薄く、同じことが繰り返される。最後に残るのは、箱を持たされた者の疲れた手だけだった。箱の話は町の中で静かに終わる。箱を配った側は別の話題へ移り、箱を売る店は次の道具を並べる。箱を持つ者は、また箱を満たすために何かを削る。箱は空になり、また満たされる。音は小さい。だがその音は確かに、誰かの未来を少しずつ薄くしていく。

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